よく「発達障害の診断を受けた子ども達は、
視覚優位だから、絵や写真を使って説明してあげたり、
スケジュールを示すと良い」等と言う人達がいる。
発達障害について書かれた本を手に取ると、当たり前のように
発達障害の子ども達は視覚優位、視覚的情報が効果的等と書かれている。
発達障害の診断の有無に関わらず、
視覚的な情報が、学習の一助になりやすい子ども達がいることは確かだ。
でも、それは発達障害の子ども達に特徴的な、共通する傾向なのだろうか?
私達はこのような「決めつけ」を
深く考えないまま受け入れてしまっていないだろうか?
もし、あなたが子ども達を客観的によく観察できる方であれば、
こんなことを目にしたことがあるのではないだろうか:
大人が一生懸命に絵や写真を使って説明しているけれども、そもそも子どもは、その絵や写真を見ていない。
絵や写真を使って説明しても、子どもは説明された通りに行動できない。
絵や写真を使って、「次はお勉強の時間だよ」と知らせようとすると、絵や写真を見せた時点で、子どもが泣き出す。
支援に使用するアプローチに関わらず、
支援がうまい人達は、子ども達をよく観察している。
これをやってみたら、子どもはどう反応するか?、
別のやり方をしてみたら、子どもの学習に変化はあるのか?、
そんなことを「その人の中の思い込み」(主観)ではなく、
客観的観察を通して、検討できている人は支援がうまい。
前の「決めつけ」の例に話を戻そう。
「発達障害の診断を受けた子ども達には
視覚的情報が有効だ」と決めつけて、
その思い込みに支配されてしまっている人達は、
子ども達の「行動が変わっていない」という事実を無視して、
その子どもにあわない対応を続けてしまう。
ちなみに、事前に絵や写真を使って次に何が起こるか等を
子どもに伝える手法は、
英語でadvance notice(以下、ANと呼びます)などと呼ぶ。
ANが効果的なのは、その子どもが
将来的になにが起こるかということについて見通しが持てないことが、
泣いたり、癇癪を起すなどの行動の「原因」になっている場合のみだ。
「見通しが持てない」というのも、
発達障害の診断を受けた子ども達についてよく行われる
「決めつけ」のひとつである。
「見通しが持てないから(原因)、泣く(結果)」等という仮説のもと、
ANが教育や福祉の実践現場で使用されていることがよくある。
でも、子ども達をよく観察すると、
発達障害の診断を受けた子ども達でも
見通しをしっかりもつことができているケースが数多くある。
例えば、次はお勉強の時間であることを知らせるために、
机の写真を見せた瞬間、泣き始める子ども達がいる。
お勉強はまだ始まっていない。
さっきまで校庭で元気に、幸せそうに走り回っていたのに、
机の写真を見せた瞬間に
(あるいは、先生がポケットに入ったカードを取り出そうとすると)、
泣きだすのだ。
このような子どもは、本当に次になにが起こるのか・なにをするべきなのか
見通しを持てていないから(原因)、このような状況において泣く(結果)のだろうか??
客観的に、子ども達を観察できる方であれば、
この子どもが泣く理由・原因は「見通しが持てないこと」ではなく、
別にあることを容易に理解できるはずだ。
原因にあわない対応を続けても、効果は期待できない。
子どもの行動は変わらない。
「決めつけ」によって、本当の原因を見逃してはいけない。
効果的な対応を行うためには、
子ども達を決めつけず、
行動の原因を客観的に調べ、
その原因やその子どもにあった、個別化された対応が欠かせない。
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