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執筆者の写真冨樫 耕平

科学と臨床心理学

更新日:2021年11月3日

日本の臨床心理学(clinical psychology)は、

「独特」の発展をとげてきました。

今日も、日本で実践されている臨床心理学と

米国や欧州の臨床心理学の間には、

大きな違いがあるように感じます。


例えば、米国では、臨床心理学の実践者は、

博士号(Ph.D/PsyD)以上の取得を前提としているのに対し、

日本では、修士号以上(e.g., 臨床心理士)または、

学士以上(e.g., 認定心理師)を前提としています。


また、米国心理学会(American Psychological Association)の定義では、

臨床心理学は、「研究に基づく実践を行う心理学の専門分野」です。

しかし、日本の臨床現場では、科学的根拠を欠く、

疑似科学(pseudoscience)に分類されるようなものが、

実践されていることも珍しくありません。


加えて、日本では、「カウンセリング心理学」と

「臨床心理学」の区別が、明確になっていません(下山、2009)。


最後に、日本では誰でも「○○心理学者(psychologist)」等と名乗ったり、

「心理学(psychology)」という言葉を自由に使うことができますが、

国外(例えば、米国NY州)では、このような行為は、違法です。


全般的な印象として、日本の臨床心理学は、

国外と比べると大きく遅れています。


さて、研究や科学に基づいた治療というと、

個人の個性や感情などを無視した、

冷たいもののような印象を受ける方々もいるかもしれません。


しかし、これは誤解です。


科学は、クライアント/患者個人の個性、多様性を尊重した

効果的かつ、倫理的な治療の実践に欠かせないものです。


科学が臨床心理学の基礎とされるのは、

クライアント/患者の利益と安全を守るためです。

人の個性や感情等の存在を否定しているからではありません。


例えば、体の病気や症状(例えば、頭痛)に対する治療は、

科学を基礎としています。

医療でも非科学的あるいは、疑似科学的な取り組み

(例えば、祈りを捧げる、頭蓋骨に穴をあけて悪霊を体の外に出す、炭酸水を飲む等)が

過去に行われていましたが、

科学によって医療は、大きく発展し、

その結果として、人々の健康も大きく向上しました。


同様に、(本来の)臨床心理学も

クライアント/患者の利益と安全を守るために

科学に基づいて実践されます。


次回、私が大学で担当している科目で

科学についてお話をします。


臨床心理学が科学的研究を基礎とするのであれば、

臨床心理学の実践を目指す者達は、

「科学」とはなにか、

そして、その限界等についても理解しておく必要があります。

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