日本の臨床心理学(clinical psychology)は、
「独特」の発展をとげてきました。
今日も、日本で実践されている臨床心理学と
米国や欧州の臨床心理学の間には、
大きな違いがあるように感じます。
例えば、米国では、臨床心理学の実践者は、
博士号(Ph.D/PsyD)以上の取得を前提としているのに対し、
日本では、修士号以上(e.g., 臨床心理士)または、
学士以上(e.g., 認定心理師)を前提としています。
また、米国心理学会(American Psychological Association)の定義では、
臨床心理学は、「研究に基づく実践を行う心理学の専門分野」です。
しかし、日本の臨床現場では、科学的根拠を欠く、
疑似科学(pseudoscience)に分類されるようなものが、
実践されていることも珍しくありません。
加えて、日本では、「カウンセリング心理学」と
「臨床心理学」の区別が、明確になっていません(下山、2009)。
最後に、日本では誰でも「○○心理学者(psychologist)」等と名乗ったり、
「心理学(psychology)」という言葉を自由に使うことができますが、
国外(例えば、米国NY州)では、このような行為は、違法です。
全般的な印象として、日本の臨床心理学は、
国外と比べると大きく遅れています。
さて、研究や科学に基づいた治療というと、
個人の個性や感情などを無視した、
冷たいもののような印象を受ける方々もいるかもしれません。
しかし、これは誤解です。
科学は、クライアント/患者個人の個性、多様性を尊重した
効果的かつ、倫理的な治療の実践に欠かせないものです。
科学が臨床心理学の基礎とされるのは、
クライアント/患者の利益と安全を守るためです。
人の個性や感情等の存在を否定しているからではありません。
例えば、体の病気や症状(例えば、頭痛)に対する治療は、
科学を基礎としています。
医療でも非科学的あるいは、疑似科学的な取り組み
(例えば、祈りを捧げる、頭蓋骨に穴をあけて悪霊を体の外に出す、炭酸水を飲む等)が
過去に行われていましたが、
科学によって医療は、大きく発展し、
その結果として、人々の健康も大きく向上しました。
同様に、(本来の)臨床心理学も
クライアント/患者の利益と安全を守るために
科学に基づいて実践されます。
次回、私が大学で担当している科目で
科学についてお話をします。
臨床心理学が科学的研究を基礎とするのであれば、
臨床心理学の実践を目指す者達は、
「科学」とはなにか、
そして、その限界等についても理解しておく必要があります。
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