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プレーヤーからコーチへ:フィードバックという技術― 人を育てるコーチが知っておきたい行動科学 ―

8月8日
読了時間: 5分

前回の記事では、

現場で成果を出す「プレーヤー」から、

人を育てる「コーチ(指導者)」への成長について書きました。


プレーヤーとして仕事ができることと、

人を効果的に育てられることは同じではありません。


では、コーチにはどのようなスキルが必要なのでしょうか。


その一つが、フィードバックです。


フィードバックは、組織における

パフォーマンスの維持・改善に欠かせません。


しかし、効果的なフィードバックの方法を学ぶ機会がないまま

指導する立場になり、うまくいかないケースも少なくありません。


フィードバックには2つの種類がある


フィードバックには、2つの種類があります(Braksick, 2007):


  • ポジティブフィードバック(positive feedback)

  • 建設的フィードバック(constructive feedback)


ポジティブフィードバックは、

望ましい行動を認め、その行動の増加や維持につなげるために行います。


一方、建設的フィードバックは、

改善が必要な行動について伝え、望ましくない行動を減らし、

それに代わる望ましい行動を増やすために行います。


どちらも重要ですが、その方法を間違えると、

期待した効果が得られないことがあります。


ポジティブフィードバックは「具体的」に

ポジティブフィードバックには、いくつかのポイントがあります。


例えば、

  • 可能な限り客観的な行動やデータに基づいて行う

  • 何が良かったのかを具体的に伝える

  • 建設的フィードバックと同じタイミングで行わない

といったことです。


単に「よかったです」、「頑張っていますね」と伝えるだけでは、

本人には何を続ければよいのか分からないことがあります。


どの行動が良かったのかを具体的に伝える。

それによって、本人は今後も続けるべき行動を理解しやすくなります。


建設的フィードバックは、なぜ難しいのか


建設的フィードバックは、

ポジティブフィードバック以上に難しいと

感じる人が多いのではないでしょうか。


私自身も、実践におけるリーダー、研究者、大学教員など、

さまざまな立場から建設的フィードバックを行ってきました。


その経験からも、改善すべきことを相手に伝え、

実際の行動変容につなげることは簡単ではないと感じます。


特に、相手の望ましくない行動について話すこと自体に

ストレスを感じるマネジャーやリーダーも少なくないでしょう。


しかし、建設的フィードバックにも、

効果を高めるためのポイントがあります


問題があるときだけ関わらない


非常に重要なのは、普段の関係性です。


相手が建設的フィードバックを聞こうとしなければ、

それによって行動が変わる可能性は低くなります。


だからこそ、問題が起きたときだけ部下のところへ行き、

指摘するような関係をつくらないことが重要です。


普段から相手の望ましい行動を観察し、

具体的なポジティブフィードバックを頻繁に行います。


このような関係ができてくると、部下の側から、


「これについてどう思いますか?」

「もっと良くするにはどうすればよいでしょうか?」

と、コーチへ助言を求める行動も生まれやすくなります。


反対に、コーチとの関わりが指摘や叱責ばかりと結びついていれば、

部下がコーチを避けたり、必要な情報を共有しなくなったりする可能性があります。


「何がいけなかったか分かりますか?」は建設的か


建設的フィードバックのつもりで行われていても、

実際には効果的とは言いにくい方法があります。


例えば、問題が起きたときに、

何がいけなかったか分かりますか? 言ってみてください。

と尋ねる方法です。


このようなやり取りには、いくつかの問題があります。


第一に、建設的フィードバックは、

基本的に他者の前ではなく、1対1で行うことが望ましいでしょう。


第二に、このような質問や叱責が繰り返されれば、

コーチとの関わりそのものが本人にとって嫌な出来事になり、

コーチを避ける行動につながる可能性があります。


第三に、そもそも本人が「何をすべきだったのか」を

知らない可能性があります。

知らないことを尋ね続けても、

望ましい答えが出てくるとは限りません。


そして第四に、ここが非常に重要です。


「何をすべきか説明できること」と、

「実際にそれができること」は同じではありません


望ましい行動についての「知識」があったとしても、

実際の場面でその行動が「できる」とは限りません。


行動分析学では、言葉で正しく説明できること(知識)と、

実際に行動できることを区別して考えます。


だからこそ、正解を言わせるだけではなく、

実際の行動を観察し、必要な支援を行うことが重要です。


人格ではなく「行動」について話す


建設的フィードバックでは、

何が望ましくなかったのか

だけを伝えて終わるのではなく、

代わりに何をすればよかったのかまで

具体的に伝える必要があります。


そして当然ながら、話す対象はその人の行動です。

  • 「責任感がない」

  • 「熱意が感じられない」

  • 「社会人としての意識が足りない」


といった人格や性格についての評価ではなく、

「どの場面で、どのような行動が起こり、

代わりにどのような行動が必要だったのか」

を明確にします。


これが、行動を変えるためのフィードバックです。


指導の連鎖を変える


効果的ではない指導が現場で繰り返される背景には、

指導者自身も同じような方法で教えられてきたことがあるのかもしれません。


「自分もこうやって教えられた。」

だから、

「自分も同じように教える。」


この連鎖を断ち切るには、

コーチ自身が人の行動を効果的に変える方法を学び、

それを実践できる環境をつくる必要があります。


プレーヤーからコーチへ成長するということは、

単に組織から与えられる役職が変わることではありません。


自分自身のパフォーマンスを管理する立場から、

他者のパフォーマンスを効果的に支援できる立場へと成長することです。


フィードバックは、そのために欠かせないスキルの一つです。


行動ソリューションズでは、

応用行動分析学と組織行動マネジメントの知見を活用し、

プレーヤーがコーチへと成長し、

組織の中で人が人を育てられる環境づくりを支援しています。

 
 
 

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