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「自分で考えて動ける職員」はどう育てる?(PART 1)― 主体性を「行動」から考える ―

5 日前
読了時間: 5分

「自分で考えて動ける職員を育てたい」


これは、多くの組織で聞かれる課題ではないでしょうか。


たとえば、福祉や医療、教育などのヒューマンサービス組織では、

あらかじめ決められた手順をただ実行すればよいとは限りません。


支援を受ける方(クライアント)の行動や状態、

そのときの状況、さらには本人の好みや文化などに応じて、

職員がその場で判断し、適切な支援を実行することが求められます。


先日、ある組織の人材育成に携わる方とお話しする機会がありました。

その際にも、「自分で考えて行動できる人材をどう育てるか」という話題になりました。


これはヒューマンサービスに限った課題ではありません。


たとえば、米国陸軍では、

Mission Command(ミッション・コマンド)という

指揮統制の考え方が重視されています。

これは、上位の指揮官が現場の行動をすべて細かく指示するのではなく、

任務や指揮官の意図(commander's intent)を共有したうえで、

現場の状況に応じた部下の意思決定と分権的な実行を可能にするものです。


つまり、上位者からその都度細かな指示を受けなくても、

置かれた状況を把握し、指揮官の意図の範囲内で、

自ら判断して行動することが求められます。


業種や組織の目的は大きく異なりますが、

指示を待つのではなく、状況に応じて

自ら適切に行動できる人材をどう育てるか」という課題には

共通する部分があります。


では、そのような職員をどう育てればよいのでしょうか。

「自分で考える」を観察できる行動から考える


最初に重要なのは、「自分で考えて動ける」という能力を、

観察・測定可能な行動として捉えることです。


私たちは日常的に、

「あの人は状況を理解している」

「判断力がある」

「主体性がある」

といった言葉を使います。


しかし、「理解」、「判断力」、「主体性」といった

概念そのものを、直接観察することはできません。


実際には、その人がどのような状況で、

何を見たり聞いたりし、何を言い、

どのような行動をとったのかを観察し、

その行動から「理解している」、「判断力がある」、

「主体性がある」などと解釈しています。


ここを混同すると、

circular reasoning(循環論法)に陥ることがあります。


たとえば、

「なぜ、この職員は状況に応じて適切に行動できたのですか?」

という問いに、

「状況を適切に判断する能力があるからです」

と答えたとします。


では、「なぜ、その職員には適切に判断する

能力があると分かるのですか?」

と尋ねると、

「状況に応じて適切に行動できているからです」

となってしまう。


つまり、

適切に行動できる → 判断力がある → 判断力があるから適切に行動できる

と、同じことを別の言葉で説明しているだけになってしまいます。


これでは、なぜその行動ができるようになったのか、

そして、どうすれば他の職員も

同じような行動ができるようになるのかは分かりません。


だからこそ、職員の主体性を育てたいのであれば、

「主体性がない」、「判断力が足りない」といった

抽象的な説明だけで終わらず、

具体的にどのような状況で、どのような行動が

できるようになってほしいのかを考える必要があります。

行動には何が影響しているのか


「自分で考えて動く」を具体的な行動として捉えることができたら、

次に考えるのは、何がその行動に影響しているのかです。


人の行動には、身体の状態やこれまでに身につけてきたスキルなど、

その人に関係するさまざまな要因と、

その人を取り巻く環境が影響します。


たとえば、体調が著しく悪ければ、

普段ならできる状況判断が難しくなったり、

適切な判断ができても必要な行動を実行できなかったりすることがあるでしょう。


一方で、組織が特に働きかけやすいのが環境です。


たとえば、二つの職場を考えてみましょう。

一方では、職員が自分で状況を判断して行動し、

結果が完璧ではなかったとしても、その試みが認められ、

必要に応じて改善のためのフィードバックを受けられる。


もう一方では、自分で判断して行動すると、

「勝手なことをしないで」

「どうして先に確認しなかったの?」と叱責される。


この二つの環境で、「自分で考えて行動する」という行動が

同じように生じるとは考えにくいでしょう。


組織は、職員の内面を直接変えようとしなくても、

職員の行動を取り巻く環境を変えることによって、

自ら判断して行動する行動を支えることができます。

「自分で考える」だけでは十分ではない


ただし、ここにはもう一つ重要な問題があります。


組織が求めているのは、

職員が何でもいいから自分で考えて行動することではありません


求められているのは、その状況に応じて、

組織の目的や基準に照らして適切な行動を選択できることです。


実は、この点は先ほどのMission Commandにも共通しています。


Mission Commandは、

「現場が好きなように判断してよい」という考え方ではありません。

重要なのは、commander's intent(指揮官の意図)の範囲内で

disciplined initiative(規律ある主体性)を発揮することです。


組織における「自分で考えて動く」ことも同じです。

たとえば、顧客からクレームの電話を受けた職員がいたとします。

その職員は自分で状況を考え、

「これは単なるクレームで、

自分が受けているのはカスタマーハラスメントだ」

と判断し、相手の話を最後まで聞かずに電話を切りました。


これは確かに、「指示を待たず、自分で考えて行動した」と

言えるかもしれません。

しかし、その判断や行動が組織の方針や、

その状況で求められる対応と一致しているとは限りません。


つまり、組織が育てたいのは単なる「自主性」ではなく、

状況の違いを見分け、それぞれの状況に応じた

適切な行動を選択できることなのです。


では、人はどうすれば、状況に応じて適切な行動を選べるようになるのでしょうか。


ここで役立つのが、行動科学における

弁別訓練(discrimination training)という手続きです。


「自分で考えて動ける職員」を育てるために、

弁別訓練をどのように活用できるのか。


次回、具体的に考えてみたいと思います。

 
 
 

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