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パフォーマンスを測ることへの3つの「壁」― 行動の科学を組織の改善に活かすために

9月9日
読了時間: 7分

行動の科学を活用してパフォーマンスを改善するためには、

重要な成果につながる行動(パフォーマンス)を

客観的に測定することが欠かせません。


しかし、コンサルティングのなかで測定について話をすると、

次のような意見が出てくることがあります。


  1. 従業員から抵抗がある

  2. 測定する時間がない

  3. 「私がしていることは、客観的に測定できない!」


今回は、この3つについて考えてみます。


① 従業員からの抵抗


重要な成果につながるパフォーマンスを特定した後、

現状を把握し、その現状に合わせた目標を設定するために、

パフォーマンスを客観的に測定します。


しかし、誰かに仕事をしている様子を観察されたり、

自分の行動を測定されたりすること自体に対して、

観察の対象となる従業員から反対意見が出ることがあります。


以前のブログでも書いた通り、

このような反応が起こる理由の一つとして、

多くの職場で「観察」が、ミスの指摘、問題点の確認、

改善点についての指導などと結びついていることが考えられます。


そのような場合には、測定や行動の観察が、

ミスやルール違反を見つけて批判するためのものではなく、

望ましい行動を見つけ、

それを増やすための機会をつくるためのものであることを

理解してもらう必要があります。


また、観察を行う管理者が、普段から従業員のミスばかりを指摘し、

努力や成果を評価しないなど、ネガティブな関わりや

非効果的なマネジメントと結びついている場合には、

そのような関り方自体を変えていく必要があります。


私のような外部のコンサルタントが観察を行う場合には、

その前に現場の職員との関係づくりが必要になるケースもあります。


このように、行動の測定に対する抵抗が生じたとき、

その原因を「測定を嫌がる人だから」、

「変化に抵抗する性格だから」と個人の特性に求めるのではなく、

そのような行動に影響を及ぼしている環境や学習の歴史を分析し、

必要なアクションを起こすことが重要です。


② 時間的制約


パフォーマンスの測定には、少なからず時間などの資源が必要です。


例えば、学校などの教育現場や、

児童養護施設などの社会的養護施設では、

深刻な人手不足が課題となっています(文部科学省, 2026; MUFG, 2025)。


このような環境では、職員は日々の業務に追われており、

通常業務に加えてパフォーマンスを継続的に測定することが

難しいケースがあります。


一般的には、ビデオカメラを用いてパフォーマンスを録画し、

後から動画を見て行動を測定したり、

AIなどのテクノロジーを活用したりすることも選択肢になります。


しかし、例えば小学校や児童養護施設などでは、

プライバシーの問題だけでなく、

カメラを設置することによる子どもたちへの影響も考慮する必要があります。

特に、虐待などの経験をもつ子どもに「大人に監視されている」という

印象を与える可能性がある場合には、

単に測定の効率だけを理由にこうした方法を採用することはできません。


一方、測定対象となる行動が起こるたびに、

その回数や持続時間などを人が記録する方法も、

対象となる行動によっては大きな手間と時間を必要とします。


そのため、利用できる時間や人員、環境上の制約を考慮して、

実行可能な測定方法をデザインすることが重要です。


場合によっては、すでに行われている業務上の記録や

評価を活用できるかもしれません。

また、新たな「測定作業」を追加するのではなく、

普段の業務活動そのものに測定を組み込めるケースもあります。


それでも、ある程度の手間と時間をかけて

パフォーマンスを測定する価値もあります。


飛行機を飛ばす際、パイロットは

さまざまなデータをもとに操縦や判断を行います。

メジャーリーグをはじめとするスポーツの世界でも、

さまざまなパフォーマンスがデータ化され、

選手やチームの改善に活用されています。


大切なことだからこそ、

曖昧な印象や主観だけではなく、客観的なデータに基づいて理解する。


パフォーマンスの測定に時間がかかるからといって、

必ずしも「測定しない」という結論になるわけではありません。

測定に必要なコストと、

そこから得られる情報の価値の両方を考える必要があります。


③ 「私がしていることは、客観的に測定できない!」


このような意見は、特に複雑な業務や、

創造性が求められる業務について聞かれることがあります。


確かに、「創造性」、「リーダーシップ」、

「主体性」、「コミュニケーション能力」といったものを、

そのまま客観的に測定しようとすれば簡単ではありません。


例えば、ピカソの作品を前にして、

「ピカソの創造性は、5点満点中4.7点」と評価したとしても、

それだけでは、彼が何をして優れた作品を生み出したのかは分かりません。


しかし、「創造性」という抽象的な言葉から一歩離れて、

創造的な成果がどのような行動によって生み出されているのかを考えてみると、

見え方が変わります。


例えば、あるアーティストが創造的な作品を生み出すまでには、


  • 新しいアイデアを出す

  • 複数の案をつくる

  • 異なる素材や技法を試す

  • 試作品をつくる

  • 他者からフィードバックを得る

  • フィードバックをもとに修正する


といった行動があるかもしれません。


仕事でも同じです。


例えば、デザインを行う仕事であれば、

一定期間に出されたアイデアの数、作成された試作品の数、

異なる案を試した回数、フィードバックを求めた回数、

それを受けて修正した回数など、

創造的な成果につながるプロセスの一部を

具体的な行動として捉えることができます。


もちろん、アイデアを100個出せば、

100個目が必ず創造的になるわけではありません。


また、測定しやすいという理由だけで

「アイデアの数」を増やせばよいわけでもありません。

量だけを目標にすれば、本来求めていた成果から

かえって遠ざかる可能性もあります。


だからこそ、まず、

「私たちが本当に求めている成果は何か?」を明確にします。


そして、「その成果を生み出すために、

実際に何をしている必要があるのか?」を考えます。


「創造性」、「リーダーシップ」、

「主体性」、「コミュニケーション能力」といった

抽象的な言葉をそのまま測定しようとするのではなく、

実際に何をしているときに、

そのように評価されるのかを具体的にしていくわけです。


そうすることで、一見すると測定が難しい仕事であっても、

成果につながる重要なパフォーマンスを特定し、

その少なくとも一部を客観的に測定できることがあります。


したがって、

「この仕事は測定できない」と結論づける前に、

何を成果とし、その成果につながるどの行動を測定するのか?

と問い直すことが重要です。


測定すること自体が目的ではない


パフォーマンス改善において、

測定すること自体が目的なのではありません。


すべての行動を測定する必要もなければ、

測定できるものを何でも数値化すればよいわけでもありません。


重要なのは、組織が目指す成果を明確にし、

その成果につながる重要なパフォーマンスを特定し、

意思決定や改善に必要なデータを、実行可能な方法で得ることです


測定への抵抗があるなら、その抵抗が生じる環境を考える。


時間がないなら、より実行可能な測定方法を考える。


「測れない」と思える仕事なら、

抽象的な言葉から離れて、成果と具体的な行動に立ち返ってみる。


測定を現場に押しつけるのではなく、

その現場で役に立つ測定の仕組みをつくること。


行動ソリューションズでは、

応用行動分析学(ABA)や組織行動マネジメント(OBM)の知見を活用し、

組織が目指す成果と、それにつながるパフォーマンスを明確にし、

現場で実行可能な測定・改善の仕組みづくりを支援しています。


パイロットが重要な計器を確認しながら飛行機を操縦するように、

経営者や管理者が、組織にとって重要ないくつかの指標を継続的に確認し、

データに基づいて判断できる仕組みをつくる


そのために、「何を測るのか」、「どのように測るのか」、

そして「得られたデータをどのように改善につなげるのか」を、

組織の方々と一緒に考えていきます。

 
 
 

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