理論を「実践」に変える科学― 行動分析学が半世紀以上成果を生み続ける理由 ―
- 冨樫 耕平

- 7月31日
- 読了時間: 3分

「理論はわかった。でも、現場ではうまくいかない」。
教育、医療、福祉、企業など、
さまざまな現場で耳にする言葉です。
優れた理論があっても、
それだけで人や組織が変わるわけではありません。
では、理論を実践につなげるには、何が必要なのでしょうか。
以前の記事でご紹介したように、
科学には大きく三つの理解の水準があります。
記述(Describe)
予測(Predict)
統制(Control)
行動分析学が目指しているのは、この三つ目である統制です。
つまり、「なぜそうなるのか」を説明したり、
行動を予測したりするだけでなく、望ましい行動を実際に増やし、
その変化を客観的に示すことを重視しています。
この考え方は、応用行動分析学(Applied Behavior Analysis: ABA)の
中核でもあります。
ABAでは、基礎研究によって明らかになった、
生物種を超えて共通する行動の原理を活用し、
社会的に重要な行動の改善に取り組んできました。
例えば、自閉スペクトラム症や
知的発達症のある子どもたちへの支援では、
日常生活に必要なスキルを効果的に教えられることが、
長年にわたる数多くの研究によって繰り返し示されています。
しかし、ここで誤解してはいけないことがあります。
行動分析学は、「正しい方法が一つだけある」と考える
科学的アプローチではありません。
同じ支援方法でも、ある人には高い効果があっても、
別の人には十分な効果が得られないことがあります。
組織でも同じです。
ある会社で成功した取り組みが、
別の会社でもそのまま成功するとは限りません。
だからこそ、行動分析学ではデータを重視します。
介入を実施し、その結果を測定し、効果を確認する。
そして、うまくいかなければ方法を修正し、
より効果的な支援へと改善していきます。
つまり、
理論を現場に当てはめるのではなく、
理論を出発点として、データに基づいて実践を最適化する。
ここに、理論と実践をつなぐ鍵があります。
さらに、現場で得られた知見は、新たな研究へとつながります。
科学は完成されたものではありません。
「本当にそうだろうか」と問い続ける姿勢(哲学的懐疑)は、
科学に欠かせない態度です。
実践から生まれた疑問が研究となり、
その研究によって得られた新たな知見が、再び実践へと還元されます。
このような研究と実践の循環こそが、行動分析学が半世紀以上にわたり、
社会的に重要な行動の変容を積み重ねてきた理由の一つだと私は考えています。
行動ソリューションズでも、
ABAと組織行動マネジメント(OBM)の知見を活用し、
「理論を伝えること」ではなく、
「現場で成果につながること」を大切にしています。
科学を知るだけでは、人も組織も変わりません。
科学を実践し、測定し、改善し続ける。
その積み重ねが、人と組織の可能性を、
目に見えるほど明らかに、そして再現可能な形で引き出していく。
それが、私たちが行動分析学を実践する理由です。



コメント