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人が辞め続ける組織で、支援の質を守れるのか― 支援現場における離職と従業員満足度を考える ―

8月27日
読了時間: 6分

私はこれまで、病院、大学、発達支援施設、学校など、

さまざまな現場で活動してきました。


こうした組織には、一つの大きな特徴があります。


そこで働く人の知識やスキルが、

提供されるサービスの質に大きく関わっていることです。


  • 新しいソフトウェア

  • 高性能なPC

  • 最新の検査機器

こうした設備や技術は、もちろん重要です。

しかし、資金さえあれば、競合する組織も同じものを導入できます。


一方、長い時間をかけて知識やスキルを身につけ、

その組織や利用者について深く理解している人材は、簡単には置き換えられません。


特に、人が人にサービスを提供する学校、福祉施設、医療機関などでは、

人材は組織にとって最も重要な資産の一つだと私は考えています。

「辞めたら、また採用すればいい」でよいのか


しかし、学校、児童養護施設、発達支援施設など、

多くの支援現場では、人材の定着が大きな課題になっています。


もちろん、一定の離職はどの組織にも起こります。


問題は、

採用する

訓練する

仕事を覚える

辞める

また採用する

というループが繰り返されることです。


組織によっては、採用後に丁寧な研修を実施し、

その研修効果まで評価しているかもしれません。

それ自体は素晴らしいことです。


しかし、その人が短期間で辞めてしまったらどうでしょうか。

採用や研修に投入した時間、費用、労力の一部が失われます。


さらに大きいのは、その人が経験を通して蓄積してきた

知識やスキルまで組織から失われることです。


そして、その影響を最終的に受けるのは、組織だけとは限りません。

支援を受けるクライアントかもしれません。

給料を上げれば、人は辞めなくなるのか


「離職を減らすには、給料を上げればよい」

そう考えることもできます。


もちろん、報酬は重要です。

しかし、報酬だけが、従業員が組織に残るかどうかを

決めているわけではありません。

実際、その業界では比較的高い水準の報酬や

福利厚生を提供しているにもかかわらず、

人材の定着に苦労している組織もあります。


では、ほかに何が関係しているのでしょうか。

私がこれまで現場で見聞きしてきた中にも、

さまざまな例がありました。


仕事をしていても成長を感じられない。

自分がやりたい仕事と、求められている仕事が合っていない。

あるいは、現場でクライアントと直接関わることに

大きなやりがいを感じていた人が、

経験年数を重ねたことで管理職になり、

本人が望んでいた仕事から離れてしまう。


「昇進」は、組織から見れば報酬かもしれません。

しかし、それを本人も報酬として感じているとは限りません。

これは、人の行動を考えるうえで非常に重要な点です。

「最近の若い人は……」で終わらせてよいのか


こうした話を、

「最近の若い人は我慢が足りない」

「昔はそんなことを言わずに働いた」

と捉えることもできます。


しかし、ヒューマンサービス領域における研究では、

離職や離職意向には、仕事への不満、バーンアウト、

ストレス、組織へのコミットメント、ソーシャルサポートなど、

組織や仕事に関わる要因が関連していることが報告されています


そして、従来のやり方を変えず、

「辞めたら、また採用すればいい」

という選択をすることもできます。


しかし、それで離職が繰り返されているのであれば、

一度立ち止まって考える価値があります。


人の問題なのでしょうか。

それとも、

人が辞めることを繰り返し生み出している組織の環境にも、

改善できるところがあるのでしょうか。


ABAや組織行動マネジメント(OBM)では、

人の行動をその人の性格や意欲だけで説明するのではなく、

その行動が起きている環境との関係から考えます。

離職についても同じ視点を持つことができます。

従業員満足度を「重要だと思う」だけで終わらせない


多くの経営者や管理者は、

「従業員の満足度は大切ですか?」と聞かれれば、

「大切だ」と答えるのではないでしょうか。


しかし、本当に重要なのは、

それが組織の優先事項として扱われ、

具体的な行動につながっているかです。


満足した従業員が必ず高いパフォーマンスを示す

という単純な話ではありません。


しかし、

  • いつ仕事を失うか分からない。

  • いつ上司から叱責されるか分からない。

  • 努力しても認められない。

  • 成長する機会がない。

  • 自分の仕事にほとんど裁量がない。


そのような環境の中で、

人が長期にわたって高いパフォーマンスを維持することを

期待するのも難しいでしょう。

では、従業員は何を求めているのか


ここで難しいのは、

「従業員満足度を高めるためには○○をすればよい」

という一つの正解がないことです。


人によっても違います。

部署によっても違います。

組織によっても違います。


もちろん、すべての従業員を常に満足させることもできません。

だからこそ、まず必要なのは、

その組織で働く人たちに何が起きているのかを知ることです。


従業員満足度調査などのアンケートを利用することもできます。


それに加えて、

  • 離職率

  • 欠勤

  • 異動希望

  • 採用後の在籍期間

など、実際に起きている行動や組織のデータも重要な情報になります。


そして、以前の記事で紹介した

管理者が普段から現場へ行き、

従業員の話を聞くことも役立つかもしれません。

ただし、ここにも注意が必要です。

「何でも言ってください」で、本音を話せるのか


管理者が、「困っていることがあったら、何でも言ってください」

と言ったからといって、従業員が率直に話してくれるとは限りません。


過去に問題を指摘したら叱責された。

意見を言ったら否定された。

改善を提案したが何も変わらなかった。


そうした経験が繰り返されていれば、

「率直に話さない」という行動が

形成されていても不思議ではありません。


つまり、「従業員が何も言わない=問題がない」

とは限らないのです。

従業員から率直な情報を得たいのであれば、

管理者側にも、率直に話すという行動が起こりやすくなる

環境をつくることが求められます。

従業員満足とクライアントへの価値は対立するのか


従業員を大切にするというと、

「従業員を甘やかすのか」

「顧客より従業員を優先するのか」

と捉えられることがあります。


私は、そうは考えていません。

特にヒューマンサービス組織では、

クライアントへサービスを届けているのは、そこで働く人たちです。


熟練した人材が組織に残り、知識やスキルを高め、

それを十分に発揮できる環境をつくることは、

クライアントに提供するサービスの質を守り、

高めることにもつながります。


だからこそ、

従業員満足と顧客満足を、

どちらか一方を選ぶ問題として考える必要はない。

私はそう考えています。


行動ソリューションズでは、

応用行動分析学(ABA)と組織行動マネジメント(OBM)の視点から、

人だけに問題を求めるのではなく、

人のパフォーマンスを支えている組織の環境や仕組みを分析し、

改善することを支援しています。


そこで働く人が成長し、その力を発揮できる組織をつくる。

そして、その先にいるより多くの人へ、質の高いサービスを届ける。

従業員にとってより良い組織と、

クライアントにとってより良い組織は、両立できる。

それが、行動ソリューションズが目指している組織支援です。

 
 
 

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